人と木のまじわり
木の戸籍|Wood Register
花梨瘤
Pterocarpus spp.
- 呼称・解説
- 唐木の銘木「花梨」(マメ科 Pterocarpus)の幹にできた瘤。「アンボイナ」とも呼ばれる。喉飴で知られるバラ科のカリンとは、まったくの別種。
- 分布・産地
- タイ・ミャンマーなど、東南アジアからフィリピンにかけての熱帯雨林。日本では八重山諸島が北限。
- 杢・木目
- 赤い心材と白い辺材がくっきりと分かれ、瘤には渦を巻く無数の眼が密に散る。隆起したゴツゴツとした塊から、複雑きわまる文様が現れる。
- 色・木肌
- 黄を帯びた紅褐色から、桃色がかった暗褐色へ。年を経るほど色は深く沈む。赤い部分はとりわけ硬く、粘りがある。
成り立ち
熱帯の雨と乾きをくり返し、緻密で重い心材を育てる。その幹の一部が、こぶとなって異様にふくらみ、渦巻く杢を結ぶ。削った粉を水にひたし、光にかざすと、青く澄んだ蛍光を放つ——古くから知られる、この木の不思議である。
香り
削れば、ほのかに薔薇を思わせる香りが立つ。花の名を負った木は、その香りもまた、花に近い。
希少性の背景
古来、唐木細工や仏具に用いられ、瘤の出た材はとりわけ貴重とされてきた。資源の減少により、原産国では伐採や輸出が次々と禁じられ(タイ・ミャンマー・ラオスほか)、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは絶滅危惧(EN)に挙げられている。新たに得られる材は、年々限られていく。
熱帯の森が、渦と眼に結んだ華。その紅が、いま手のなかにある。





